食事の際や口を大きく開けた瞬間に、左右どちらか片方の顎に鋭い痛みや重だるい違和感を覚えることは、日常生活において決して珍しいことではありません。しかし、その痛みの原因は多岐にわたるため、いざ病院へ行こうとした際に「歯科なのか、耳鼻科なのか、あるいは内科なのか」と迷ってしまう方が非常に多いのが現状です。適切な診療科を選択することは、早期治療と症状の悪化防止において最も重要なステップとなります。まず結論から申し上げれば、片方の顎が痛む場合に第一に検討すべき診療科は歯科、あるいは歯科口腔外科です。統計的に見て、顎の痛みの原因として最も頻度が高いのは「顎関節症」と呼ばれる疾患であり、これは歯科領域の専門分野だからです。顎関節症は、顎を動かす筋肉の過緊張や、関節内のクッションの役割を果たす関節円板のズレ、あるいは関節そのものの変形によって引き起こされます。歯科口腔外科を受診すれば、パノラマエックス線写真や触診、可動域の測定などを通じて、関節に構造的な問題がないかを精査してもらえます。また、片方の顎が痛む原因には、歯そのもののトラブルも深く関わっています。例えば、奥歯の激しい虫歯や歯周病、あるいは「親知らず」の周囲で炎症が起きる智歯周囲炎は、その痛みが顎の骨や筋肉に放散し、あたかも顎関節が痛んでいるかのように錯覚させることがあります。これらは歯科医師による適切な除菌や消炎処置、必要に応じた抜歯によって解決します。一方で、口の中に異常が見当たらないにもかかわらず顎が痛む場合は、耳鼻咽喉科の領域である可能性があります。特に「副鼻腔炎」や「上顎洞炎」が原因で、頬の裏側にある空洞に膿が溜まると、その圧力が上の奥歯や顎の関節を圧迫し、片側に強い痛みを生じさせることがあります。また、耳の下にある耳下腺や顎の下にある顎下腺に石ができる「唾石症」や、リンパ節の腫れも、外見からは顎の痛みとして認識されることが多いのです。さらに、高齢者や神経疾患を抱える方の場合は、脳神経内科の受診が必要なケースも存在します。「三叉神経痛」は顔面の神経が血管などに圧迫されて起こる病気で、食事や洗顔などのわずかな刺激で、顎や頬に突き刺すような激痛が走ります。この場合は、歯科的な処置では効果がなく、神経に対する専門的な投薬治療が不可欠です。非常に稀ではありますが、狭心症や心筋梗塞といった心疾患の「放散痛」として、左側の顎だけが痛むというケースも医学的に知られています。もし、顎の痛みに加えて胸の苦しさや息切れを伴うのであれば、内科や循環器内科への受診を一刻も早く検討しなければなりません。受診の際の判断基準としては、まず「口を開け閉めしたときに音がするか」「歯を食いしばる癖があるか」を振り返り、これらに心当たりがあればまずは歯科口腔外科へ。鼻詰まりや耳の不調、あるいは首筋の腫れがあるなら耳鼻咽喉科へ。そして、触れるだけで電気が走るような痛みなら脳神経内科へ、という流れが最もスムーズです。
片方の顎に痛みを感じたら何科を受診すべきか完全解説