パーキンソン病の治療は、薬物療法が中心となりますが、それ以外にも、患者さんのQOL(生活の質)を維持・向上させるために、様々な治療法やアプローチが組み合わせて用いられます。薬物療法以外の主な選択肢としては、リハビリテーション、日常生活の工夫、そして進行期には外科的治療(脳深部刺激療法:DBS)があります。まず、「リハビリテーション」は、パーキンソン病の治療において非常に重要な役割を果たします。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といった専門家が、個々の患者さんの状態に合わせて、運動機能の維持・改善、日常生活動作(ADL)の向上、コミュニケーション能力の維持などを目的とした訓練や指導を行います。運動療法では、関節可動域訓練、筋力増強訓練、バランス訓練、歩行訓練、姿勢矯正訓練などが行われ、体の動きやすさや安定性を高めます。LSVT®BIGといったパーキンソン病に特化した運動プログラムも有効とされています。作業療法では、食事や着替え、整容といった日常生活動作をスムーズに行うための工夫や、自助具の紹介、住環境の調整などが行われます。言語療法では、声が小さくなったり、ろれつが回りにくくなったりする発話障害(構音障害)や、飲み込みにくさ(嚥下障害)に対する訓練が行われます。次に、「日常生活の工夫」も大切です。規則正しい生活を送り、十分な睡眠とバランスの取れた食事を心がけることは、全身状態を良好に保つ上で基本となります。また、転倒予防のために、家の中の段差をなくしたり、手すりを設置したり、滑りにくい履物を選んだりといった環境調整も重要です。そして、薬物療法だけでは症状のコントロールが難しくなった進行期のパーキンソン病に対しては、「脳深部刺激療法(DBS:Deep Brain Stimulation)」という外科的治療が検討されることがあります。これは、脳の特定の部分(視床下核や淡蒼球内節など)に電極を植え込み、持続的に電気刺激を送ることで、パーキンソン病の運動症状(特に振戦、筋強剛、無動・寡動、ジスキネジアなど)を改善する治療法です。手術の適応や効果、リスクについては、神経内科医と脳神経外科医が連携し、慎重に判断されます。