手の震えや動作の遅さ、歩きにくさといった症状が現れると、パーキンソン病を心配される方が多いでしょう。しかし、これらのパーキンソン病と似たような症状(パーキンソニズム)を引き起こす病気は、パーキンソン病以外にもいくつか存在し、これらを総称して「パーキンソン症候群」と呼びます。パーキンソン病との正確な鑑別診断が、適切な治療方針を立てる上で非常に重要になります。パーキンソン症候群の原因となる代表的な疾患をいくつかご紹介します。まず、「薬剤性パーキンソニズム」です。これは、特定の薬剤(例えば、一部の抗精神病薬や制吐薬、降圧薬など)の副作用として、パーキンソン病と似たような症状が現れるものです。原因薬剤を中止または変更することで、症状が改善することがあります。次に、「脳血管性パーキンソニズム」です。脳梗塞や脳出血といった脳血管障害によって、脳の特定の部分(特に大脳基底核や脳幹など)がダメージを受けることで、パーキンソン病様の症状が生じます。主に下半身の症状(歩行障害やすり足、すくみ足など)が目立ち、左右差があまりないことが多いと言われています。また、「多系統萎縮症(MSA)」や「進行性核上性麻痺(PSP)」、「大脳皮質基底核変性症(CBD)」といった神経変性疾患も、パーキンソン病と症状が類似しているため、鑑別が必要です。これらの疾患は、パーキンソン病の四大症状(振戦、強剛、無動、姿勢反射障害)に加えて、それぞれ特徴的な他の神経症状(例えば、MSAでは自律神経障害や小脳失調、PSPでは眼球運動障害や転倒しやすさ、CBDでは片側性の強い運動障害や認知機能障害など)を伴うことが多いです。これらの神経変性疾患は、一般的にL-ドパ製剤などの抗パーキンソン病薬の効果が乏しいという特徴もあります。その他、正常圧水頭症や甲状腺機能低下症、あるいは稀ですが脳腫瘍などが、パーキンソニズムの原因となることもあります。これらの疾患との鑑別診断は、神経内科医が、詳細な問診や神経学的診察、そしてMRI検査やSPECT検査といった画像検査、血液検査などを総合的に評価して行います。
パーキンソン病と間違えやすい他の病気(パーキンソン症候群)