現代のストレスフルな社会において、動悸を主訴に医療機関を訪れる人は右肩上がりに増えています。心身症や自律神経失調症の第一線で活躍する専門医に、現代人特有の動悸の背景と、私たちが取るべき「正しい身の振り方」について詳しく話を伺いました。先生によれば、現代の動悸の約四割には、心臓そのものの器質的な異常ではなく、脳の「不安回路」の暴走が関与していると言います。インタビューの中で先生が語ったのは、私たちの生活環境がいかに心臓を疲れさせているかという現実でした。「常にスマートフォンをチェックし、情報の濁流に晒される生活は、交感神経を休ませる暇を与えません。すると、脳の警報装置である扁桃体が過敏になり、何の危機もないはずのオフィスや電車の中でも、身体に『戦え、あるいは逃げろ』という指令を出し、それが激しい動悸となって現れるのです」との解説がありました。しかし、先生はこう釘を刺します。「心因性だからといって、病院に行かなくていいという意味ではありません。むしろ、パニック障害や不安障害からくる動悸は、本人の自尊心を著しく削り、ひいては心臓そのものに負担をかけ続けることになります」。専門医が考える病院に行くべきタイミングは、「予期不安」が芽生えたときです。「またあの動悸が来たらどうしよう」と不安になり、外出を控えたり、特定の場所を避けたりし始めたとき、それはもはや個人の意志でコントロールできる領域を超えています。診察室では、医師はまず心電図で心臓の安全を担保した上で、認知行動療法や適切な薬剤調整を通じて、脳の過剰な警報システムを「再学習」させていきます。取材の中で特に印象的だったのは、現代人が「動悸に執着しすぎている」という指摘でした。「自分の鼓動を意識しすぎるあまり、わずかなリズムの変化にパニックを起こす。これは『心臓恐怖症』とも呼べる状態で、医学的なサポートなしには抜け出すのが難しい迷路です」というお話でした。先生からのアドバイスとして、「動悸が起きたら、まず自分の指先を眺めて、呼吸を三回だけ吐くことに集中してください。そして、翌日には迷わずクリニックへ連絡してください」という具体的な指示を頂きました。専門医の言葉には、目に見えない不調と戦う人々への深い理解が込められていました。動悸は、あなたの心と身体が「もうこれ以上は背負いきれない」と限界を訴えているサインです。その声を無視して走り続けるのではなく、専門家のナビゲートを仰ぐことで、再び穏やかな呼吸ができる日常を取り戻せるのです。私たちは、もっと自分の身体を「甘やかす」許可を自分自身に与えるべきなのかもしれません。