パーキンソン病が疑われる場合、医療機関ではどのような流れで診断が行われ、どのような検査が必要になるのでしょうか。まず、医療機関(主に神経内科)を受診すると、医師による非常に詳しい問診が行われます。これがパーキンソン病の診断において最も重要なステップの一つです。医師は、以下の点について詳細に聞き取ります。いつから、どのような症状(手の震え、動作の遅さ、歩きにくさ、表情の乏しさ、声の小ささ、便秘、睡眠障害、気分の落ち込みなど)があるのか。症状の始まり方や進行の速さ。日常生活への支障の程度(例えば、着替えや食事、歩行などがどの程度困難になっているか)。これまでの病歴や、頭部外傷、薬剤の使用歴(特に抗精神病薬など)、家族歴(家族にパーキンソン病や他の神経疾患の人がいるか)など。次に、詳細な神経学的診察が行われます。医師は、パーキンソン病の四大症状である「安静時振戦(ふるえ)」「筋強剛(きんきょうごう:筋肉のこわばり)」「無動・寡動(むどう・かどう:動作の遅さや少なさ)」「姿勢反射障害(しせいはんしゃしょうがい:バランスの悪さや転びやすさ)」の有無や程度を、様々な診察手技(例えば、指鼻指試験、回内・回外運動、歩行観察、姿勢反射テストなど)を用いて評価します。また、表情の硬さ、声の大きさや抑揚、瞬きの回数、書字(文字が小さくなるかなど)、そして嗅覚の低下や自律神経症状(便秘、頻尿、起立性低血圧など)、精神症状(うつや不安など)の有無も確認します。これらの問診と診察所見から、パーキンソン病の可能性が高いと判断された場合、診断を補助するためや、他の類似疾患(パーキンソン症候群など)との鑑別、あるいは脳の他の異常を除外するために、画像検査が行われることがあります。代表的なのは「頭部MRI検査」で、脳梗塞や脳腫瘍、水頭症といった他の疾患がないかを確認します。また、「SPECT(単一光子放射断層撮影)検査」や「PET(陽電子放射断層撮影)検査」といった核医学検査は、脳内のドパミン神経の変性の程度を画像化することができ、パーキンソン病の診断精度を高めるのに役立ちます(例えば、ドパミントランスポーターイメージングやMIBG心筋シンチグラフィなど)。検査結果、臨床症状、そしてL-ドパ製剤などの抗パーキンソン病薬の反応を総合的に判断して、医師がパーキンソン病と診断します。
パーキンソン病診断までの流れと検査内容