皮膚科の専門外来を訪れる患者様の中には、手足口病の痛みに耐えかねて来院される大人が後を絶ちません。今回は、数多くの症例を診てきた専門医の視点から、大人が罹患した際の具体的な症状の推移と、意外と知られていないリスクの真実について詳しくお話しします。まず、大人の手足口病は、子供のように「手のひらに赤い点が出るだけ」では済みません。多くの場合、発疹は非常に大きく、水疱を伴い、その周囲が赤く腫れ上がるのが特徴です。この発疹が指先や爪の周りに集中すると、神経を圧迫して激しい拍動性の痛みを引き起こします。患者様の中には、夜中に痛みで目が覚め、鎮痛剤も効かないと訴える方もいらっしゃいます。足の裏についても同様で、一歩踏み出すごとに針を刺されるような痛みが伴うため、歩く姿勢が不自然になり、二次的に腰痛や膝痛を併発することさえあります。また、皮膚の症状だけでなく、喉の粘膜にも深刻な変化が現れます。軟口蓋や扁桃の周辺に深い潰瘍ができ、これが激痛をもたらします。大人の場合は唾液の分泌量も多いため、炎症部位が常に刺激され、治癒が遅れる傾向にあります。そして、治療が終わり、日常を取り戻したと思った頃にやってくるのが「爪の脱落」です。これはコクサッキーウイルスA6型など特定の型のウイルスで顕著に見られる現象で、爪を作る工場である爪母が一時的にウイルスの攻撃を受けて機能を停止するために起こります。爪が浮き上がり、根元から剥がれてくる様子は非常にショッキングですが、幸いなことにその下からは新しい爪が再生してきますので、過度に心配する必要はありません。しかし、その間、指先が保護されないため不快感や細かい作業のしにくさが続きます。私たち医師は、こうした激しい症状に対して、基本的には鎮痛剤や抗ヒスタミン薬による対症療法を行いますが、最も大切なのは「自身の回復力を信じて徹底的に休むこと」だとお伝えしています。大人の手足口病は、身体が受けた大きなダメージの修復に、私たちが想像する以上のエネルギーを消費します。見た目の発疹が消えても、内部の炎症や神経の興奮が落ち着くまでには時間がかかることを理解し、焦らずに養生することが、後遺症を最小限に抑え、完全な健康を取り戻すための唯一の道なのです。
専門医に聞く大人の手足口病に潜むリスクと正しい対処法