水疱瘡の話題になると、治療に使われる薬と同時に、「ワクチン」の重要性についても語られます。この二つは、水疱瘡という病気から子供たちを守るための、いわば車の両輪のような関係にあります。それぞれの役割と関係性を正しく理解することは、適切な感染予防と対策に繋がります。まず、水疱瘡ワクチンは、病気にかかることを未然に防ぐ「予防」のためのものです。二〇一四年からは定期接種となり、多くの子供たちが一歳と三歳の二回、公費で接種を受けています。ワクチンを接種することで、体内に水痘帯状疱疹ウイルスに対する免疫が作られ、もしウイルスに接触しても感染を防いだり、感染しても発症しなかったりする効果が期待できます。そして、たとえ感染して発症してしまった場合(これをブレークスルー水痘と呼びます)でも、ワクチン未接種の場合に比べて発疹の数が少なく、発熱も軽度で済むなど、症状が大幅に軽くなることが知られています。一方、抗ウイルス薬などの「治療薬」は、実際に水疱瘡を発症してしまった後に、症状を和らげ、重症化を防ぐために使われるものです。つまり、ワクチンは「かからないようにする」「かかっても軽く済ませる」ための守りの盾、治療薬は「かかってしまった後に戦う」ための武器、と考えることができます。ワクチン接種が普及したことで、水疱瘡にかかる子供の数は激減しました。そして、もしブレークスルー水痘にかかったとしても、軽症で済むことが多いため、抗ウイルス薬などの治療薬を必要としないケースも増えています。しかし、ワクチンを接種していても、免疫力の状態などによってはある程度の症状が出ることがあり、その際には治療薬が有効な選択肢となります。予防のためのワクチンと、治療のための薬。この両輪がしっかりと機能することで、私たちは水疱瘡という病気に効果的に立ち向かうことができるのです。