虫垂炎の手術が無事に終わり、退院が決まると、ほっとすると同時に「これからの生活はどうなるのだろう」という不安を感じる方も多いでしょう。特に、食事や運動、仕事への復帰など、具体的な生活上の注意点について知っておくことは、スムーズな回復と安心した社会復帰のために非常に重要です。まず、入院期間ですが、近年の主流である腹腔鏡下手術の場合、炎症の程度にもよりますが、術後三日から一週間程度で退院となるのが一般的です。開腹手術になった場合や、腹膜炎を起こしていた場合は、もう少し長く入院が必要になることもあります。退院後の「食事」については、基本的には消化の良いものから少しずつ慣らしていくことが推奨されます。暴飲暴食や、油分の多いもの、刺激の強いもの、食物繊維が多すぎるものは、術後しばらくは胃腸に負担をかける可能性があるため、避けた方が賢明です。腸の動きが完全に元に戻るまでは、便秘や下痢をしやすくなることもありますが、水分をしっかり摂り、バランスの良い食事を心がけていれば、徐々に落ち着いてきます。「運動」に関しては、退院後すぐの激しい運動や、重いものを持つような腹圧のかかる動作は、一ヶ月程度は控えるべきです。傷の痛みや、内部の治癒が完全ではないため、無理は禁物です。散歩などの軽い運動から始め、体の調子を見ながら徐々に強度を上げていきましょう。「仕事復帰」のタイミングは、職種によって大きく異なります。デスクワークであれば、退院後一週間から二週間程度で復帰できることが多いですが、力仕事や体を激しく動かす仕事の場合は、医師と相談の上、三週間から一ヶ月程度の休養が必要になることもあります。また、頻度は低いものの、術後の合併症として「腸閉塞(イレウス)」があります。これは、お腹の中で腸が癒着し、食べ物の通りが悪くなる状態です。退院後に、強い腹痛や嘔吐、お腹の張りが続くような場合は、我慢せずにすぐに手術を受けた病院に連絡してください。術後の経過は個人差が大きいですが、焦らず、自分の体の声に耳を傾けながら、ゆっくりと元の生活に戻していくことが大切です。
虫垂炎の手術後。安心して社会復帰するための注意点