「水疱瘡は子供の病気」というイメージが強いですが、大人になってから初めて感染すると、子供の場合とは比較にならないほど重症化しやすいという事実を知っておく必要があります。大人の水疱瘡治療では、合併症を防ぎ、一日も早く回復するために、迅速かつ強力な薬物療法が不可欠となります。大人が水疱瘡にかかった場合、まず間違いなく処方されるのが「抗ウイルス薬」です。アシクロビルやバラシクロビルといった経口薬が中心ですが、症状が非常に重い場合や、肺炎などの合併症が疑われる場合には、入院して点滴で投与することもあります。子供の場合は軽症であれば自然治癒に任せることもありますが、大人の場合は発疹の数も多く、発熱も高熱が長く続く傾向があります。何より怖いのが合併症で、ウイルスが肺に感染して起こる「水痘肺炎」や、脳に影響を及ぼす「脳炎」など、命に関わる深刻な状態に陥るリスクが子供よりも格段に高いのです。そのため、発疹に気づいたら四十八時間以内に抗ウイルス薬の服用を開始し、ウイルスの増殖を初期段階で徹底的に叩くことが極めて重要になります。また、かゆみも子供より強く感じることが多く、かき壊しによる細菌の二次感染や、跡が残りやすいといった問題もあります。これに対しては、抗ヒスタミン薬の内服や、適切な塗り薬が処方されます。さらに、高熱や全身の倦怠感も強いため、解熱剤としてアセトアミノフェンが処方されることもあります。ここでも自己判断で市販の解熱剤を使うことは絶対に避けなければなりません。もしあなたが成人で、水疱瘡にかかった経験がなく、特徴的な発疹が出た場合は、決して「ただの水疱瘡」と軽視せず、一刻も早く内科や皮膚科を受診してください。早期の的確な薬物治療が、重症化を防ぐための唯一にして最大の防御策となります。