鏡を見て、片方だけ顔の輪郭が変わっていることに気づく。耳の下から顎にかけての部分がぷっくりと腫れ、押すと鈍い痛みがある。食べ物を噛んだり、酸っぱいものを想像したりすると、ジーンと痛みが走る。こうした症状は、耳の下にある唾液腺「耳下線」に炎症が起きているサインです。大人がこのような症状に見舞われた場合、まず迷うのが「何科を受診すればよいのか」という点でしょう。風邪のような気もするし、歯の痛みとも違う。結論から言うと、耳下腺の腫れや痛みで受診すべき専門の診療科は「耳鼻咽喉科」です。耳鼻咽喉科は、その名の通り、耳・鼻・喉(のど)を専門とする科ですが、実は首から上の、脳と眼を除いた領域全般を扱っています。唾液腺もその守備範囲に含まれており、耳下腺の病気の診断と治療におけるエキスパートです。耳鼻咽喉科の医師は、まず問診で症状の経過や、過去のおたふく風邪の罹患歴、ワクチン接種歴などを詳しく聞き取ります。その後、腫れている部分を触診し、硬さや熱感、痛みの程度を確認します。口の中から唾液の出口である耳下腺乳頭を観察し、膿が出ていないかなどをチェックすることも重要です。原因を特定するために、さらに詳しい検査が行われることもあります。血液検査では、炎症の程度や、ムンプスウイルス(おたふく風邪の原因ウイルス)の抗体価を調べることで、おたふく風邪かどうかを診断する手がかりになります。また、超音波(エコー)検査を行えば、耳下腺内部の状態や、唾石(唾液の石)の有無、膿の溜まり(膿瘍)などを画像で確認することができます。もし、腫瘍など別の病気が疑われる場合には、CTやMRIといったより精密な画像検査が必要になることもあります。自己判断で様子を見たり、専門外の科を受診したりすると、診断が遅れ、治療が長引いてしまう可能性もあります。耳の下の腫れと痛みに気づいたら、まずは迷わず耳鼻咽喉科の扉を叩きましょう。
耳の下が痛い。大人の耳下腺炎で何科を受診すべきか