耳下腺炎にかかると、耳の下の腫れや痛みだけでなく、食事の際につらい思いをすることがよくあります。唾液腺である耳下腺は、食べ物を見たり、口に入れたりすると、消化を助けるために唾液を分泌しようと活発に働きます。しかし、炎症を起こしている状態では、この唾液を分泌する働きそのものが強い痛みを誘発してしまうのです。特に、酸っぱいものや、よく噛む必要がある硬いものは、唾液の分泌を強力に促すため、激痛を引き起こすことがあります。この「食事時痛」を少しでも和らげ、体力を落とさないように栄養を摂るためには、食事内容にいくつかの工夫が必要です。まず、避けるべきは「酸味の強いもの」です。レモンや梅干し、酢の物などは、想像するだけで唾液が出てくるように、唾液分泌を最も強く促進します。症状が落ち着くまでは、これらの食品は控えるのが賢明です。同様に、「香辛料の効いた辛いもの」も、唾液腺を刺激するため避けた方が良いでしょう。次に、「硬い食べ物」も注意が必要です。せんべいやナッツ、硬い肉など、何度も強く噛まなければならない食品は、咀嚼筋を使うことで耳下腺周辺に物理的な刺激を与える上、唾液の分泌も促してしまいます。では、どのような食事が適しているのでしょうか。基本は、「柔らかく、のどごしの良いもの」です。おかゆや雑炊、うどん、ポタージュスープ、茶碗蒸し、豆腐、プリン、ゼリー、ヨーグルトなどは、あまり噛まずに飲み込めるため、痛みを誘発しにくいでしょう。食事の温度は、熱すぎると刺激になることがあるため、少し冷まして人肌程度の温度にするのがおすすめです。栄養バランスを考えるなら、野菜や鶏肉などを細かく刻んで煮込んだスープや、バナナや桃などをミキサーにかけたスムージーなども良いでしょう。水分補給も非常に重要です。ストローを使うと、口を大きく開けずに済むため、痛みが和らぐことがあります。痛みが強い時は無理をせず、食べられるものを少しずつ摂るようにし、つらい時期を乗り切りましょう。