虫垂炎の痛みには、非常に特徴的な経過をたどるパターンがあります。この典型的な症状を知っておくことは、病気の早期発見と、適切なタイミングでの受診に繋がります。もし自分や家族に当てはまる症状が出たら、それは体からの重要な警告サインかもしれません。虫垂炎の最もクラシックな症状は、「痛みの移動」です。最初は、みぞおちのあたり、つまり胃の周辺に、なんとなくシクシクするような、あるいは鈍い痛みとして始まります。この段階では、多くの人が胃痛や食べ過ぎだと勘違いしがちです。しかし、この痛みは数時間から半日ほどかけて、徐々におへその周りを経由し、最終的に右の下腹部へと移動していきます。この右下腹部に痛みが落ち着いた時、虫垂炎の可能性は非常に高くなります。痛み方も、当初の鈍い痛みから、次第に鋭く、持続的な痛みに変化していくのが特徴です。この痛みに加えて、他の随伴症状も現れます。吐き気や嘔吐、食欲の完全な喪失は、ほぼ必発と言えるほどよく見られる症状です。また、炎症が体内で起きているため、三十七度から三十八度程度の発熱を伴うことも多いです。自分でできる簡単なチェック方法として、右下腹部を指でゆっくりと押し、パッと離した時に痛みが響くように強くなる「反跳痛(はんちょうつう)」があります。これは腹膜に炎症が及んでいるサインであり、虫垂炎を強く疑う所見です。ただし、これらの症状の現れ方には個人差があり、特に子供や高齢者、妊婦の場合は非典型的な経過をたどることも少なくありません。痛みの移動がなく、いきなり右下腹部が痛むケースもあります。いずれにせよ、右下腹部の痛みに加えて、食欲不振や吐き気、発熱といった症状が一つでも当てはまる場合は、自己判断で様子を見ることはせず、速やかに外科や消化器外科を受診することが重要です。
これって虫垂炎?見逃してはいけない初期症状