子供が「お腹が痛い」と訴えることは日常的によくあるため、親としては対応に迷う場面も多いでしょう。しかし、その腹痛が単なる食べ過ぎや便秘ではなく、緊急性の高い「虫垂炎」である可能性も常に頭に入れておく必要があります。特に、まだ自分の症状をうまく言葉で表現できない幼児の場合、親がそのサインを注意深く観察することが何よりも重要になります。大人の虫垂炎では、みぞおちから右下腹部への痛みの移動が典型的ですが、子供の場合はこの痛みの移動がはっきりしないことが多く、最初からお腹全体や右下腹部を痛がるケースも少なくありません。言葉で「ここが痛い」と示せない小さな子供の場合、「機嫌が異常に悪い」「ぐずり続ける」「体をエビのように丸めてうずくまっている」「抱っこしようとすると嫌がって泣く」といった行動が、強い腹痛のサインとなります。また、食欲が全くなくなるのも重要な所見です。いつもは好きな食べ物を見せても顔をそむける、ミルクや母乳を飲みたがらない、といった変化には注意が必要です。嘔吐や発熱を伴うことも多く、風邪や胃腸炎と見分けるのが難しいこともありますが、虫垂炎の場合は腹痛が持続し、時間とともにはっきりと悪化していく傾向があります。子供の虫垂炎は、大人に比べて進行が早いという特徴もあります。虫垂の壁が薄いため、炎症が始まると比較的短時間で破れてしまい、腹膜炎を起こしやすいのです。そのため、親の迅速な判断が求められます。もし子供の腹痛で受診を迷った場合、まずはかかりつけの「小児科」に相談するのも一つの方法です。しかし、痛がり方が尋常でない、ぐったりしているといった緊急性を感じる場合は、躊躇せず総合病院の「救急外来」や「外科」を直接受診するべきです。子供の「いつもと違う」という親の直感を信じ、早めに行動することが、子供を重症化から守るための鍵となります。
子供の腹痛。虫垂炎を親が見分けるポイント