強い腹痛で病院を訪れた際、虫垂炎が疑われる場合、医師はどのような手順で診察し、診断を確定させていくのでしょうか。その流れを知っておくことは、患者自身の不安を和らげる助けになります。病院に到着すると、まず行われるのが「問診」です。いつから、どこが、どのように痛むのか、吐き気や熱はあるか、食事は摂れているか、過去の病歴や手術歴など、医師は診断の手がかりとなる情報を詳しく聞き取ります。この時、痛みがみぞおちから右下腹部へ移動した経緯などを具体的に伝えられると、診断がよりスムーズに進みます。次に、ベッドに横になって「触診」が行われます。医師はお腹を優しく、あるいは深く押して、痛みの場所や程度、筋肉の硬さ(腹膜刺激症状の有無)などを確かめます。特に、右下腹部にあるマックバーニー点と呼ばれる特有の圧痛点や、押して離した時に痛みが響く反跳痛の有無は、虫垂炎を診断する上で非常に重要な所見となります。触診で虫垂炎が強く疑われると、さらに客観的な証拠を得るために検査が行われます。まず「血液検査」です。体内で炎症が起きると、白血球の数や、炎症反応を示すCRPというタンパク質の数値が上昇します。これらの数値を確認することで、炎症の程度を評価します。続いて、画像で直接お腹の中の状態を確認する「画像検査」が行われます。最も手軽で体に負担がないのが「腹部超音波(エコー)検査」です。プローブと呼ばれる器具をお腹に当て、超音波を使って腫れ上がった虫垂を直接観察します。診断精度を高めるために、より詳細な情報を得られる「CT検査」が行われることも非常に多いです。CTは体を輪切りにしたような鮮明な画像が得られるため、腫れた虫垂の状態や、周囲への炎症の広がり、膿の溜まり(膿瘍)の有無などを正確に評価でき、診断の確定や治療方針の決定に大きく貢献します。これらの問診、診察、検査の結果を総合的に判断し、医師は虫垂炎の確定診断を下すのです。