突然の発熱と発疹。もしかして水疱瘡かもしれないと思った時、病院に行く前にとりあえず家にある市販薬で対処しよう、と考えるのは非常に危険な行為です。特に、水疱瘡の治療において市販薬の自己判断による使用は、深刻な合併症を引き起こすリスクがあり、絶対に避けなければなりません。最も注意すべきは、解熱鎮痛剤の使用です。熱が出ているからといって、市販の風邪薬や痛み止めを安易に使うことは禁物です。特に「アスピリン」やその系統のサリチル酸系解熱鎮痛剤を水疱瘡やインフルエンザの子供に使用すると、「ライ症候群」という非常に重篤な病気を引き起こす可能性があります。ライ症候群は、急性の脳症と肝臓の機能障害を特徴とし、命に関わることもある極めて危険な状態です。アスピリン以外でも、どの成分が安全かを保護者が判断するのは困難です。水疱瘡で高熱が出た場合の解熱剤は、必ず医師の診察を受けた上で、安全性が確認されている「アセトアミノフェン」などを処方してもらう必要があります。また、かゆみに対して市販の塗り薬を使おうと考える人もいるかもしれません。しかし、市販のかゆみ止めの中には「ステロイド」成分が含まれているものがあります。ステロイドは免疫を抑制する作用があるため、ウイルス感染症である水疱瘡に使用すると、かえってウイルスの増殖を助長し、症状を悪化させてしまう恐れがあります。水疱瘡の診断は、似たような発疹の出る他の病気との鑑別も含め、医師でなければ正確に行うことはできません。適切な治療薬(抗ウイルス薬や安全な対症療法薬)を処方してもらうためにも、水疱瘡が疑われたら、まずは速やかに小児科や皮膚科を受診すること。それが、お子さんやご自身の体を守るための鉄則です。