あれは金曜日の夜でした。夕食を食べ過ぎたのか、みぞおちのあたりがキリキリと痛み始めました。よくある胃痛だと思い込み、市販の胃薬を飲んで早めにベッドに入ったのですが、痛みは一向に和らぎません。夜中には吐き気も催し、ほとんど眠れないまま朝を迎えました。土曜の朝になっても体調は最悪で、不思議なことに、あれほど痛かったみぞおちの痛みは少し和らぎ、代わりにおへその右下あたりに、ズキズキと突き刺すような鋭い痛みが居座っていました。食欲は全くなく、熱を測ると三十七度八分。これはただごとではないと直感し、近所の休日診療を行っている総合病院の外科を受診することにしました。病院では、すぐに血液検査とCT検査が行われました。検査結果を待つ間、痛みはどんどん強くなり、歩くのも響くほどでした。診察室に呼ばれると、医師から「典型的な急性虫垂炎ですね。炎症がかなり強いので、今日これから緊急手術になります」と、あっさりと告げられました。正直、頭が真っ白になりましたが、この痛みから解放されるなら、と手術に同意しました。手術は腹腔鏡で行われ、全身麻酔だったので、気づいた時には病室のベッドの上でした。お腹には三カ所の小さな絆創膏が貼られているだけで、あれほどひどかった痛みは嘘のように消えていました。術後の痛みは痛み止めで十分にコントロールでき、翌日には歩行器を使ってトイレに行くこともできました。食事はお粥から始まり、徐々に普通の食事に戻っていきました。結局、入院したのは五日間。今思えば、金曜の夜に「ただの胃痛」と自己判断せず、もっと早く病院に行っていれば、もしかしたら手術ではなく薬で治療できたのかもしれない、という思いもあります。この経験を通して、体の不調、特に経験したことのない種類の痛みを軽視してはいけないと、心から学びました。自分の体を守れるのは、最終的には自分自身の判断なのだと痛感した出来事でした。
ただの腹痛だと思っていた。私の虫垂炎手術体験記