肝臓の検査数値が示すことと専門診療科の役割
健康診断の結果表にずらりと並ぶ「AST(GOT)」、「ALT(GPT)」、「γ-GTP」といったアルファベットの羅列。これらが肝臓の状態を映し出す鏡であることは知っていても、その一つ一つが何を意味し、なぜ専門の診療科を受診する必要があるのかを深く理解している人は少ないかもしれません。これらの数値の意味と、専門科である消化器内科や肝臓内科が果たす役割を知ることは、自身の健康管理において非常に重要です。ASTとALTは、主に肝臓の細胞内に存在する酵素です。肝臓に炎症が起きたり、細胞が壊れたりすると、これらの酵素が血液中に漏れ出し、血中濃度が上昇します。特にALTは肝臓への特異性が高く、この数値の上昇は肝臓に何らかのダメージが加わっていることを強く示唆します。一方、γ-GTPはアルコールの摂取によって誘導される酵素として有名ですが、それだけでなく、胆汁の流れが滞る「胆道系疾患」や、薬剤性の肝障害でも高値を示すことがあります。消化器内科や肝臓内科の専門医は、まずこれらの数値が単独で高いのか、あるいは複数で高いのか、その上昇の程度や比率から、病気の原因を大まかに推測します。例えば、ALTがASTより著しく高い場合は脂肪肝やウイルス性肝炎を、γ-GTPが突出して高い場合はアルコールの影響や胆道の問題を疑います。その上で、B型・C型肝炎ウイルスの有無を調べる血液検査や、腹部超音波検査で肝臓の形状、脂肪の蓄積具合(脂肪肝の程度)、腫瘍の有無などを画像で直接観察します。このように、複数の検査結果というピースをパズルのように組み合わせ、生活習慣や既往歴といった問診情報と統合して、初めて正確な診断を下すことができるのです。これが、単なる数値の異常を確定診断へと導く専門医の重要な役割なのです。