夏の体調不良を指す言葉として、私たちは「クーラー病」と「夏バテ」を混同して使いがちです。どちらも倦怠感や食欲不振といった共通の症状があるため、無理もありません。しかし、この二つは原因が根本的に異なり、したがって対処法も変わってきます。自分の不調がどちらに起因するのかを正しく見極めることが、効果的な対策への第一歩となります。まず、「クーラー病」の主な原因は、「室内外の急激な温度差による自律神経の乱れ」です。冷房の効いた涼しい環境と暑い屋外を何度も行き来することで、体温調節を司る自律神経が疲弊し、バランスを崩してしまいます。その結果、血行不良が起こり、冷え、頭痛、肩こり、だるさ、胃腸の不調といった様々な症状を引き起こします。クーラー病は、一日中オフィスで過ごすデスクワーカーなど、屋内にいる時間が長い人によく見られるのが特徴です。一方、「夏バテ」の主な原因は、「高温多湿の環境による体力の消耗」です。日本の夏特有の厳しい暑さの中で、体は体温を下げようと大量の汗をかきます。この発汗によって、水分と共に体内のミネラルやビタミンが失われ、脱水症状や栄養不足に陥りやすくなります。また、暑さによる睡眠不足や、食欲不振によるエネルギー不足も体力を奪います。夏バテの主な症状は、全身の強い倦怠感、疲労感、食欲不振、無気力など、エネルギーが枯渇したような状態が特徴です。見分けるための簡単なポイントは、「どこにいる時に症状がつらいか」です。冷房の効いた部屋に入ると症状が悪化したり、体の冷えを感じたりする場合はクーラー病の可能性が高いでしょう。逆に、屋外の暑い場所にいるだけでぐったりしてしまう、汗が止まらないといった場合は夏バテが疑われます。もちろん、両方が複合的に起こっている場合もあります。原因を正しく理解し、クーラー病なら体を温め、夏バテなら水分と栄養補給を意識するなど、的確なセルフケアを心がけましょう。
クーラー病と夏バテの決定的な違いとは