水疱瘡の治療過程で、患者やその家族を最も悩ませるのが、絶え間なく襲ってくる強いかゆみです。このかゆみにどう対処するかは、治療の質を左右するほど重要な課題と言えます。なぜなら、かき壊してしまうと水疱が潰れて細菌感染(二次感染)を引き起こしたり、色素沈着やクレーターのような跡が残ってしまったりする原因になるからです。このつらいかゆみをコントロールするために、医療機関では主に塗り薬と飲み薬が処方されます。まず塗り薬ですが、古くから使われているものに「カチリ(フェノール・亜鉛華リニメント)」があります。これは、水疱を乾燥させ、皮膚を保護する目的で用いられる白い懸濁液です。ただ、塗った跡が白く残り、衣類に付着しやすいことや、乾燥させすぎることで逆にかゆみを誘発する場合もあるため、最近では処方される機会が減りつつあります。代わりに、非ステロイド系の消炎鎮痛成分を含むクリームや、皮膚のバリア機能を保つための保湿剤、あるいは細菌感染を防ぐための抗菌薬入りの軟膏などが処方されることが増えています。医師は、発疹の状態を見極め、水疱が破れているか、乾燥しているかといった段階に応じて最適な塗り薬を選択します。一方、より根本的にかゆみを抑えるために処方されるのが、抗ヒスタミン薬などの「かゆみ止めの飲み薬」です。これは、かゆみの原因となるヒスタミンという体内物質の働きをブロックすることで、体の中からかゆみの感覚を和らげます。特に夜間の強いかゆみは睡眠を妨げ、体力の消耗に繋がるため、飲み薬の役割は非常に大きいと言えます。薬によっては眠気を催すものもあるため、日中の活動に影響が出る場合は医師に相談するとよいでしょう。塗り薬と飲み薬を適切に併用し、爪を短く切る、涼しい環境で過ごすといった生活上の工夫を加えることで、つらいかゆみの時期を乗り切りましょう。
水疱瘡のかゆみを和らげる塗り薬と飲み薬